一ノ蔵

一ノ蔵

一ノ蔵のある松山町は、コスモス園として名高い「御本丸公園」、県の重要無形文化財に指定されている日本刀匠の工房、江戸時代伊達藩の家老であった松山の領主・茂庭家の菩提寺「石雲寺」や祈祷寺「満徳寺」など、古くから城下町として栄えた名残が今なお風情を醸し出しています。

この城下町を、酒・味噌にあやかって『醸』、町のキャッチフレーズ「花と歴史の香るまち」から『華』、そして人が集まる城壁で囲まれた『邑』の字を使い、この一帯を『醸華邑』(じょうかむら)として、ゆっくりと散策が楽しめるように整備されています。

また、昔からの米どころとして知られ、町の基幹産業としての美味しい米作りには全町一体となって取り組んでいます。大自然の懐の中にひっそりとたたずんでいる(株)一ノ蔵本社蔵のある丘陵地帯は豊富な伏流水に恵まれ、まさに酒造りの桃源郷として最適の地です。

一ノ蔵の沿革

世界は泥沼化したベトナム戦争の末アメリカ軍の敗戦が濃厚になりつつある頃、日本では故田中角栄首相の「日本列島改造ブーム」に沸き立っていた昭和48年、宮城県内の中堅蔵元4社が、それぞれの家業に見切りをつけ、企業合同によって新たな会社をつくりました、それが今では日本でも屈指の酒造メーカーとして全国に知られた(株)一ノ蔵です。一ノ蔵の社章の桝は、4つの蔵が一緒になり、それぞれ「人」を大切にしていこうとの願いを込めて作られました。

若き経営者4人が周りの期待を一身に浴びている中で船出した設立当時の一ノ蔵は、新たな設備投資とオイルショックによる建築資材の高騰にあえぎ、また大消費地仙台では灘の三増酒が全盛で、新会社は苦境に立たされました。そんな中にあっても「他の清酒メーカーと差別化するには高品質の日本酒造りを目指す」との方針から、あえて売れ筋の普通酒から本醸造酒に切り替えて販売するとの一大英断で巻き返しを図りました。

全社員一丸となって宮城県内の酒販店を訪問するローラー作戦など、ひたすら知名度アップに積極的に取り組んだことが功を奏し、徐々に販売量が増加し宮城県内での足場を固めていきました。

その後、首都圏に新たな販路を求めていた中で歴史的な岡永の飯田博氏と出会いがありました。そのことが日本名門酒会への取り組みとなり、一ノ蔵が一躍全国ブランドとして左党垂線の蔵となるきっかけとなりました。そして現在では皆様ご承知のとおり日本酒業界の雄と云われるほどの企業になりました。

「手をかけ、心を込めた手造りの酒」を酒造りの基本とし、初代社長・松本善作氏の深い愛情と指導のもと、浅見商店、勝来酒造店、桜井酒造店、松本酒造店の若き代表者4氏がひとつになり、強い信頼関係と、それぞれの蔵の持っている酒造りの経験を生かして一ノ蔵は発展してきました。

(株)一ノ蔵誕生のバックボーンである経営者4人共通の「プラス志向と好奇心の精神」は今も社員に受け継がれており、一世を風靡した「無鑑査本醸造」に始まり、シャンパンを思わせる発泡清酒「すず音」、「ひめぜん」など積極的に開発されている新商品はそれぞれが日本酒の新定番として根強い人気を誇っています。

毎年4月に開講している「一ノ蔵日本酒大学」、7月には「いちのくら微生物林間学校」、そして各地で開催されている「一ノ蔵を楽しむ会」など、日本の文化と伝統としての醸造発酵の啓蒙と日本酒を守り育んでいます。「高品質の日本酒づくり」と「醸造発酵の技術を活用した地域の活性化」を旗印に、オンリーワンの酒蔵を目指し、日本酒復権に賭け新しい酒文化への挑戦を続ける宮城の銘蔵です。

受賞歴

平成3年4月名古屋局長賞中部鑑評会
平成4年4月金賞東北六県鑑評会
平成4年5月優等賞南部杜氏鑑評会
平成4年4月金賞全国清酒鑑評会
平成5年4月金賞東北六県鑑評会
平成5年5月金賞全国清酒鑑評会
平成5年5月優等賞東北六県鑑評会
平成6年4月金賞東北六県鑑評会
平成6年5月金賞全国清酒鑑評会
平成7年4月金賞東北六県鑑評会
平成7年5月金賞全国清酒鑑評会
平成8年4月金賞東北六県鑑評会
平成8年5月優等賞南部杜氏鑑評会
平成8年5月岩手県知事賞南部杜氏鑑評会
平成8年5月岩手県経済連会長賞南部杜氏鑑評会
平成8年5月金賞全国清酒鑑評会
平成9年4月金賞東北六県鑑評会
平成9年5月優等賞南部杜氏鑑評会
平成9年5月岩手県知事賞南部杜氏鑑評会
平成9年5月花巻市長賞南部杜氏鑑評会
平成9年5月金賞全国清酒鑑評会
平成10年4月金賞東北六県鑑評会
平成10年5月優等賞南部杜氏鑑評会
平成10年5月銀賞全国清酒鑑評会

キーワードは遊び心と手造り

低迷する清酒製造業の中で、着実に生産量を伸ばし、顧客最優先を第一に、社員を思い地元の地域経済の振興を盛り上げ、日本酒からバイオまで幅広く手がけている一ノ蔵の浅見社長と社員食堂で昼食をはさみ、酒の製造工程を案内していただきながら2時間30分にわたってじっくりとお話をうかがうことができました。

世界のそれぞれの国が、世界へ通用する自国の産業を保護育成している中で、日本文化の原点であり、食生活の基本としての米や農産物に対し、グローバルスタンダードを旗印に経済の競争原理を導入し衰退していく中、日本の伝統文化としての日本酒を進化させ真の国民酒として継承し、手造りの素晴らしさを伝えていくことに情熱を傾けている浅見社長と(株)一ノ蔵の実像を、一つ一つを解き明かしたいと思います。

浅見会長

浅見会長の経歴

1945年生まれ、仙台二番町小学校から五橋中学校⇒仙台一高⇒へ進み東京農大醸造学科を卒業後家業の浅見商店に入社しました。高校時代は弓道にこり、大学に入るとマンドリンクラブの活動に熱中、4年の時には指揮者として全国を演奏旅行しました。その後(株)一ノ蔵社内ではロックバンド「ザ・ムーン・シャイナーズ」を結成、ベースを担当しながらバンドマスターとして大活躍し、94年にはオリジナルCDを発売するほどの本格派ミュージシャンです。

浅見会長のリーダーシップ

合奏団の指揮者は楽曲を理解し、各パートのハーモニー(協調性)をまとめる上げる強い指導力で、聴く人に感動を与える演奏ができます。気さくなお人柄と、幅広く深い見識と先見性、創造性と好奇心はもって生まれた天性ながら、音楽のみならず絵画をはじめ芸術をこよなく愛する心と強いリーダーシップは麻雀や音楽に明け暮れた学生時代に培われたものでしょう。

森林の中の本社蔵

理想を求める若き創業者4人が新たに酒蔵を建てる時の条件として「酒造りに適した水質と豊富な伏流水が湧き出る場所で、おいしい米の産地が近くにあり、かつ広大な土地を確保できるところ」との厳しい条件をクリアしたのが現在の酒蔵が建つ松山町の丘陵地帯です。

最新の設備と人材

「酵母・菌類などの微生物が、米のでん粉から糖類、アルコール、有機酸類などを作り日本酒となります。これは他国の酒造りは類をみない日本独自の技術です。それには、醸造学を学んだスペシャリストが思う存分能力を発揮できる環境を整えて研究開発するのがベストとの考えから、東北大や山形大卒業の若き研究者を集め、最先端の設備を駆使して新たな商品の開発にあたっています。」

研究室の中で、高価な分析機器などを拝見しながら、「社長、酒造りはもうかるんですね!」との問いに、「いや国の補助金で購入したものが多いんです。」

酒造りについて

「機械が得意としている補助的な作業は機械に任せ、一番大切な人の感性を必要とする酒の造りの部分は全て手作業で行います。原料の米は農産物ですから、その年、品種、産地によって全て違います。そのため米それぞれに水に漬ける時間が違ってきます。大変微妙な世界なのです。

コンピューター社会のいま、人間は情報の90%を目から入れていると云われています。医学の世界でも、名医と云われる先生はコンピューターによる検査データを活用しながらも、なお患者さんを手による触診、鼻による嗅診、目で見ての視診など人間本来もっている感覚を研ぎ澄まして診察しています。そのように人間の感覚はコンピューターに勝るとも劣らない素晴らしい能力を秘めているのです。私たちは人の感性を磨き、生かした酒造りを目指しています。」

新たな展開

昨年盛岡に遊びに行った時、観光案内を手にした若い女性の集団が盛岡名物のじゃーじゃー麺を食べにきていることを知り、宮城ならではの新たな麺の開発を思い立ちました。」

「盛岡名物の麺と云えば、わんこそば、盛岡冷麺そしてジャージャー麺があります。原料はそれぞれ【そば粉】【じゃがいも】【小麦粉】です。その中で唯一米を原料としている麺はないんです、宮城と云えば米どころ、米を原料に麺が出来ないかと思案した末、米に独自の食文化をもっているベトナムへ視察に行くことを思い立ち先月ベトナムに行ってきました。

現地には米の粉を使った数多くの麺などの料理があり、皆すべておいしく日本人好みの食味でした。現地で試そうと思って持参した米ヌカで麺を作ってもらいましたが、うまく出来ませんでした。でもヒントは掴んできました」との社長の弁、「なにしろ毎年4万俵(60?`当り)の米から、800トンの米ヌカが出ます、それを何とか商品化して宮城の特産品として来年には売り出したいですね。本業の新商品としては、現在胃潰瘍に利くお酒の発売に向け容器の選定をしている最中で、生薬タイプの300ミリとさっぱりタイプの720ミリの2品を近々販売開始の予定です。」

「私たちは、お酒の世界で楽しく夢のある商品開発をしていきたいとの思っています。宴会やパーティー用の酒として現在の清酒のアルコール度数15度では強すぎて敬遠される方がおりますからアルコール度数10度位の新たな商品開発を急いでいます。純米酒『すず音』『ひめぜん』も吟醸酒も、多様な酒造りの始まりと思っております。これからも新たなジャンルの商品開発を行います。手造りの利点は醸造発酵工程を現場で工夫することにより新商品の開発が容易であることです。今後の新商品にご期待下さい。」

精米について

▲左は普通酒(1升作るのに原料の米は3分の1)、右は吟醸酒(1升作るのに原料の米は1本と2分の1)

精米時間(30俵張り・1800kg)
精米歩合精米時間品 種白米量
65%約27時間トヨニシキ1170kg
60%約30時間ササロマン1080kg
55%約43時間ササニシキ990kg
50%約50時間蔵の華900kg
40%約95時間山田錦720kg
35%約100時間山田錦630kg

最新の精米器で時間をかけてじっくりと精米します。大吟醸はなんと4日間以上かけて精米します。

一ノ蔵のご案内

山林の中に広がる広大な敷地41000坪の中に建つ本社蔵は平成5年に完成。最新の瓶詰棟、貯蔵タンク、製品、倉庫群と精米棟など衛生的な施設が連なり、また見学コースのいたるところに日展無鑑査作家の油絵が飾られ、一ノ蔵に来られた方々が、日本の伝統文化である日本酒造りに触れ合いながら、楽しい時間を過ごせる空間を演出しています。

貯蔵タンク群

▲貯蔵タンク群

日展無鑑査作品の絵画

▲日展無鑑査作品の絵画

研究室

▲研究室

米の浸漬タンク室

▲米の浸漬タンク室

▲麹室

醪仕込室

▲醪仕込室

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