日本酒ブランド「獺祭」の現代的な戦略

今や日本酒の代表的ブランドとなった「獺祭」。近年売上を大幅に躍進させ、若い層にも認知を広めるなど、日本酒業界全体が低迷する状況にある中、業績を伸ばしています。その成功の基礎には、現代社会に即した戦略がありました。

日本酒界の異端児

日本酒界の常識を覆したとされる画期的な「獺祭」ブランドの構築。そこには、まずターゲットの客層を、日本酒を知らない若い世代や女性に向けたというマーケティングの斬新さがあります。

都心部のお洒落な若者が集まるイベントに積極的に参加し、雰囲気や高級感も含めたプロモーションを行い、「オシャレな日本酒」としてのイメージを広めていったのです。

徹底した製造マニュアルで、味のムラをなくす

基本的に、日本酒の味は、杜氏と言われる日本酒職人の長年の経験と勘に左右されます。彼らは五感での日本酒の出来具合を感じ、製法を調節していくのです。そのため、もちろん杜氏や年によっても味や品質にムラが出ます。まさに「職人芸極まれり」というこの仕事が日本酒業界の伝統でしたが、獺祭はこの伝統をも革新しました。

徹底したマニュアルを作り、誰が作っても同じレベルの品質や味を保てるようにしたのです。これにより、杜氏不足で生産量が増やせないという悩みも解決しました。この結果、一定して杜氏よりも美味しい酒が造れるようになったという成果が出ました。伝統的には冬にしか生産できなかった日本酒を1年中生産することができるようになり、流通量も伸ばして増える需要に応え、さらに知名度を上げていったのです。